サポンテ 勉強ノート

サポンテの勉強ノート・読書メモなどを晒します。

ヒトラー演説 - 熱狂の真実 (中公新書, 高田 博行著)

はじめに

 この時代のドイツについて興味があり、図書館でこの新書に出会ったので借りて読んでみました。

イメージが一人歩きして行った先から、ヒトラー演説を一度連れ戻してみないといけない。

 著者は冒頭の「プロローグ」に書いています。その理由として...

イメージは往々にして一人歩きする。ヒトラーAdolf Hitler)の演説の場合も例外ではない。ヒトラーの演説といえば、声を大きく張り上げるヒステリックな姿が思い浮かぶ。ヒトラーはたしかに、クライマックスシーンでは大きなジェスチャーでがなり立てるように語り、話すスピードも速い。(中略)テレビなどで、このようなシーンが繰り返し流されているのだろう。しかし実際には、演説中のヒトラーがいつもそうであるわけでないし、またそれだけがヒトラーの演説の特徴でもない。

 ...とあります。

 実際、わたしたちはそのようなイメージを持っています。そればかりか、ヒトラーといえば反ユダヤ主義や優生思想の大きな代名詞であり、そのイメージだけで捉えられることも多いと感じます。それは十分すぎるほど大きな罪であることはたしかなのですが、ヒトラーの犯した罪はそれだけはありませんから、多方面から省みることは重要でしょう。

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世界をどのように見ているか

シュタイナー 悪について

シュタイナー 悪について

 この本を読んでもっとも印象に残ったのは「昔の人は、現代とは異なるものの見方をしていた」ということです。こう抽象的に書くと、「そんなことは当たり前じゃないか。科学的な考え方が一般的じゃなく、宗教が民衆の心を占めていた時代だ。まだ天動説の時代なんだぞ」と言われるかもしれません。たしかにそういった環境や時代時代のコモンセンスの違いから、ものの見方が変わるということは確かにあります。しかし、どうもそういうことではなくて、それ以上に大きな違いがあるようなのです。

 153ページから引用します。

 何度もお話ししたように、私たちは「進化」という現実と真剣に向き合わなければなりません。魂は、人が思っているよりもはるかに大きな変化をするものです。例えば古代ギリシア時代も現代も、人間の魂は同じ状態にある、と思ったら、それは現代人の思い込みに過ぎません。今お話ししたいのは、そういう魂と環境世界との関係についてです。

 安易な態度をとりたがる現代人はこういうでしょう。__「古代のギリシア人もローマ人も、周囲に感覚世界を知覚していた。われわれも周囲に感覚世界を知覚している。そこに本質的な違いなどない。」

 しかし本質的な違いがあるのです。

 次に243ページから引用します。

 キリスト紀元九世紀にいたるまでの人間は、それ以後とは異なる仕方で思考内容に向き合っていた。自分の魂の中に生きている思考内容を、自分で作り出したものだとは感じていなかった。霊界からの贈り物だと思っていた。感覚で知覚した対象を思考する時にも、その思考内容は、感覚的事物を通して語りかけてくる神的なものの啓示だったのである。

(中略)

 さて、九世紀以降の人間は、自分が思考内容を形成するのだと感じるようになる。そして思考内容のこの形成が、魂のいとなみの中の個人的、個別的な働きであると感じるようになる。だから思考する人は、知的な態度の中に、人間の個的な魂の本質を見てとることができた。

 現代人は、それ以前の時代の人々が持っていた知覚・思考の何かを失っていて、代わりに何かを手に入れた。それは必然の進化である。これから先の未来は、現代のものの見方を乗り越えて、また新しい知覚・思考を獲得していく。そういう内容でした。

 もちろんこの本に書かれている内容はそれだけではありませんし、主なテーマですらありません。ですが、とても印象に残ったのでここに記しておきます。

 こうした「印象に残る示唆」のようなものが、シュタイナーの本を読んでいるとたくさんあり、また別のシュタイナーの本を読む際、非常に参考になります。

献灯使 (講談社 多和田葉子著)

献灯使 (講談社文庫)

献灯使 (講談社文庫)

はじめに

 大きな災厄の後の近未来の日本。その災厄以前から生きている人は死ねない身体になり、その災厄以降に生まれた人は体が弱く早逝。日本は鎖国状態でも政府は機能しており、主人公の曾孫は献灯使として国外に旅立つことに...。主人公の老人義郎の曾孫無名を慈しむ気持ち、無名が義郎を労る気持ちの美しさが心に染み入る作品です。

 ネットで、著者の多和田葉子の記事を読み、図書館で本を探して最初に出会ったのがこの本でした。今年の冬だったと思います。[^1]

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新編 はじめてのニーチェ (講談社+α新書) 適菜 収 (著)

新編 はじめてのニーチェ (講談社+α新書)

新編 はじめてのニーチェ (講談社+α新書)

  • 作者:適菜 収
  • 発売日: 2012/12/21
  • メディア: 新書

はじめに

 先日の「キリスト教は邪教です!につづき、滴菜収の本です。今回は翻訳本ではありません。

 この本を読んだ理由は、この著者が好きだったのと、やっぱりニーチェに強い興味を持っていたこと、なにより「ツァラトゥストラ」に挫折したからでした(笑)。サポンテはあまり頭が良くありません(文章を読んでいただければ分ると思いますが)。

どんなことが書いてあるか

 この本にはどんなことが書いてあるでしょう。

 それは、この本の第一章、「なぜ今ニーチェなのか?」にざっくりと書かれていますが

全部で50項目あり、順番に読み進めていくうちに、ニーチェの教えが自然に頭の中に入ってくるように作りました。

 おそらく日本で一番カンタンなニーチェの入門書だと思いますが、内容のレベルを落としているわけではありません。ご安心ください。

 とのことです。

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キリスト教は邪教です! 現代語訳『アンチクリスト』 (講談社+α新書) (日本語) 新書 フリードリッヒ・ニーチェ (著), 適菜 収 (翻訳)

はじめに

 いつのまにか本棚にニーチェの本が増えてきた気がする今日この頃。

 最近しばらく、図書館がしまっていたり、図書館へ行く体力がなくなってしまっていたりで、いつか読みたいと思いつつ読めていなかった『キリスト教は邪教です!』を本屋で購入しました。最近、本屋さんも苦境みたいだから利用しないとね。余談ですが、反対に最近 Amazon では日用品の出荷を優先させているようで書籍は後回しにされ、品切れが多くなっているそうですね。

 ニーチェの「アンチクリスト」は他にも翻訳本が出ていますが、サポンテはこの訳者の「適菜収」の書く文章が、とても読みやすく好きなのでこれを選びました。だからニーチェの本というよりは適菜収の本だと、自分の中では考えているかもしれません。

中身はちゃんと濃かった

 Amazon の書評を見ていると「読みやすい」とか「すぐに読める」とか「つまらない」とか書かれているので、ひょっとして内容が薄いのではないか、わかりやすくし過ぎて内容がペラペラになってしまっているのではないか、という懸念がありました。

 確かに一日で読むことができる内容でした。いえ、半日もかからなかったかもしれません。

 しかし内容が軽薄だとか、物足りないだとか感じることはなく、また、サポンテのだらけきった頭にはしっかりとした歯応えもあり、刺激的で楽しく読ませていただきました。

サポンテとキリスト教

 訳者は最初に以下のように書いています。

「私たちは無意識のうちに、キリスト教的な考え方、行動パターンに巻き込まれている。宗教というはっきりした形をとらなくても、政治思想や哲学などに姿を変えて、キリスト教はじわじわと世界中に広がっている」とニーチェは言います。

 それに加えて、サポンテは欧米の本をよく読みます。とくにシュタイナーの本が多いですし。そういうわけでキリスト教の周辺知識はそこそこ入ってきます。聖書の通読はしていませんが(途中まではしました)。サポンテもキリスト教の影響を受けている人間のひとりです。

 サポンテは「無自覚に、なんらかの影響を受けてしまっている」ということは避けるべきであると考えています。この本を読もうと思ったのはそんな理由もあるかもしれません。

ニーチェを知る本(そして訳者の適菜収を知る本)

 そんな理由も後付けで考えられるかもしれませんが、まあ、とにかく面白そうだったから読みたかったのです。そして面白かった。

 哲学の本というのはなかなか難しくて読むのに骨の折れるものです。そこで本書は、ニーチェの代表作『アンチクリスト』を、ニーチェの肉声をよみがえらせるような形で「現代語訳」しました。つまり、どなたでも理解できるようにわかりやすくしたわけです。

 Amazon の書評にあるように、翻訳は一部精確ではないのかもしれません。しかしニーチェの生の慟哭や筆の勢いのようなものは、たしかに息づいていると感じました。

 哲学の本は、特に翻訳本はアカデミックな雰囲気を醸し出していなければならないなどという、なんというかはっきり言って虚飾にすぎない格式張った文体のものが多くて、この本は、ほんとうに人類の共有財産たる知識を多くの人に届けるのだという、当たり前のことをちゃんとしてくれている本だと感じました。

 このように過激な本を執筆し、人々の目覚めを呼び掛けたニーチェに、それを多くの人に届けようと骨を折ってくれた訳者の方に、それぞれの勇気に感謝したいと思います。

アンチクリストの誕生 (ちくま文庫)

アンチクリストの誕生 (ちくま文庫)

サポンテは死にたがっている

 若い人が、自死に追い詰められたというニュースが世界に広がっています。ニュースになることがなかったとしても、若い人たちの死因は、永らく自殺がトップを占めています。自殺について、サポンテの思うところを書きます。

サポンテは死にたがっている

 サポンテは、うつ病に罹っています。いったい、どのくらい前からなのか、ハッキリと思い出せない。むしろ今となっては、うつ病でない時間があったのだろうかと思うほどずっと以前から患っています。とは言え、元気だった時もたしかにありましたので、生涯を通してというほどではないようです。

 そのためなのか、とくに関係ないのか、サポンテは毎日のように「死にたい」と呟きます。心の底から、そう願って呟きます。

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農業講座 第四講(「農業講座―農業を豊かにするための精神科学的な基礎」ルドルフ シュタイナー (著), 市村 温司, 新田 義之, 佐々木 和子 (共訳) イザラ書房)

農業講座

農業講座

ノート

 農業講座 第四講のノートです。肥料とは何か、施肥とはどのようなものであるか、そこから発展した霊的な肥料について書かれています。

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農業講座 第四講のノート

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