サポンテ 勉強ノート

サポンテの勉強ノート・読書メモなどを晒します。

世界をどのように見ているか

シュタイナー 悪について

シュタイナー 悪について

 この本を読んでもっとも印象に残ったのは「昔の人は、現代とは異なるものの見方をしていた」ということです。こう抽象的に書くと、「そんなことは当たり前じゃないか。科学的な考え方が一般的じゃなく、宗教が民衆の心を占めていた時代だ。まだ天動説の時代なんだぞ」と言われるかもしれません。たしかにそういった環境や時代時代のコモンセンスの違いから、ものの見方が変わるということは確かにあります。しかし、どうもそういうことではなくて、それ以上に大きな違いがあるようなのです。

 153ページから引用します。

 何度もお話ししたように、私たちは「進化」という現実と真剣に向き合わなければなりません。魂は、人が思っているよりもはるかに大きな変化をするものです。例えば古代ギリシア時代も現代も、人間の魂は同じ状態にある、と思ったら、それは現代人の思い込みに過ぎません。今お話ししたいのは、そういう魂と環境世界との関係についてです。

 安易な態度をとりたがる現代人はこういうでしょう。__「古代のギリシア人もローマ人も、周囲に感覚世界を知覚していた。われわれも周囲に感覚世界を知覚している。そこに本質的な違いなどない。」

 しかし本質的な違いがあるのです。

 次に243ページから引用します。

 キリスト紀元九世紀にいたるまでの人間は、それ以後とは異なる仕方で思考内容に向き合っていた。自分の魂の中に生きている思考内容を、自分で作り出したものだとは感じていなかった。霊界からの贈り物だと思っていた。感覚で知覚した対象を思考する時にも、その思考内容は、感覚的事物を通して語りかけてくる神的なものの啓示だったのである。

(中略)

 さて、九世紀以降の人間は、自分が思考内容を形成するのだと感じるようになる。そして思考内容のこの形成が、魂のいとなみの中の個人的、個別的な働きであると感じるようになる。だから思考する人は、知的な態度の中に、人間の個的な魂の本質を見てとることができた。

 現代人は、それ以前の時代の人々が持っていた知覚・思考の何かを失っていて、代わりに何かを手に入れた。それは必然の進化である。これから先の未来は、現代のものの見方を乗り越えて、また新しい知覚・思考を獲得していく。そういう内容でした。

 もちろんこの本に書かれている内容はそれだけではありませんし、主なテーマですらありません。ですが、とても印象に残ったのでここに記しておきます。

 こうした「印象に残る示唆」のようなものが、シュタイナーの本を読んでいるとたくさんあり、また別のシュタイナーの本を読む際、非常に参考になります。