サポンテ 勉強ノート

サポンテの勉強ノート・読書メモなどを晒します。

キリスト教は邪教です! 現代語訳『アンチクリスト』 (講談社+α新書) (日本語) 新書 フリードリッヒ・ニーチェ (著), 適菜 収 (翻訳)

はじめに

 いつのまにか本棚にニーチェの本が増えてきた気がする今日この頃。

 最近しばらく、図書館がしまっていたり、図書館へ行く体力がなくなってしまっていたりで、いつか読みたいと思いつつ読めていなかった『キリスト教は邪教です!』を本屋で購入しました。最近、本屋さんも苦境みたいだから利用しないとね。余談ですが、反対に最近 Amazon では日用品の出荷を優先させているようで書籍は後回しにされ、品切れが多くなっているそうですね。

 ニーチェの「アンチクリスト」は他にも翻訳本が出ていますが、サポンテはこの訳者の「適菜収」の書く文章が、とても読みやすく好きなのでこれを選びました。だからニーチェの本というよりは適菜収の本だと、自分の中では考えているかもしれません。

中身はちゃんと濃かった

 Amazon の書評を見ていると「読みやすい」とか「すぐに読める」とか「つまらない」とか書かれているので、ひょっとして内容が薄いのではないか、わかりやすくし過ぎて内容がペラペラになってしまっているのではないか、という懸念がありました。

 確かに一日で読むことができる内容でした。いえ、半日もかからなかったかもしれません。

 しかし内容が軽薄だとか、物足りないだとか感じることはなく、また、サポンテのだらけきった頭にはしっかりとした歯応えもあり、刺激的で楽しく読ませていただきました。

サポンテとキリスト教

 訳者は最初に以下のように書いています。

「私たちは無意識のうちに、キリスト教的な考え方、行動パターンに巻き込まれている。宗教というはっきりした形をとらなくても、政治思想や哲学などに姿を変えて、キリスト教はじわじわと世界中に広がっている」とニーチェは言います。

 それに加えて、サポンテは欧米の本をよく読みます。とくにシュタイナーの本が多いですし。そういうわけでキリスト教の周辺知識はそこそこ入ってきます。聖書の通読はしていませんが(途中まではしました)。サポンテもキリスト教の影響を受けている人間のひとりです。

 サポンテは「無自覚に、なんらかの影響を受けてしまっている」ということは避けるべきであると考えています。この本を読もうと思ったのはそんな理由もあるかもしれません。

ニーチェを知る本(そして訳者の適菜収を知る本)

 そんな理由も後付けで考えられるかもしれませんが、まあ、とにかく面白そうだったから読みたかったのです。そして面白かった。

 哲学の本というのはなかなか難しくて読むのに骨の折れるものです。そこで本書は、ニーチェの代表作『アンチクリスト』を、ニーチェの肉声をよみがえらせるような形で「現代語訳」しました。つまり、どなたでも理解できるようにわかりやすくしたわけです。

 Amazon の書評にあるように、翻訳は一部精確ではないのかもしれません。しかしニーチェの生の慟哭や筆の勢いのようなものは、たしかに息づいていると感じました。

 哲学の本は、特に翻訳本はアカデミックな雰囲気を醸し出していなければならないなどという、なんというかはっきり言って虚飾にすぎない格式張った文体のものが多くて、この本は、ほんとうに人類の共有財産たる知識を多くの人に届けるのだという、当たり前のことをちゃんとしてくれている本だと感じました。

 このように過激な本を執筆し、人々の目覚めを呼び掛けたニーチェに、それを多くの人に届けようと骨を折ってくれた訳者の方に、それぞれの勇気に感謝したいと思います。

アンチクリストの誕生 (ちくま文庫)

アンチクリストの誕生 (ちくま文庫)