サポンテ 勉強ノート

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考えることから生きることへ―ルドルフ・シュタイナーの思想を現代に生かす (フランシス エドマンズ 麗沢大学出版会)

考えることから生きることへ―ルドルフ・シュタイナーの思想を現代に生かす

考えることから生きることへ―ルドルフ・シュタイナーの思想を現代に生かす

はじめに

日本語に訳されているシュタイナーの本は多くはありません。あまり需要も無いのかもしれませんが。入門の本は何冊かありますが、それらを読んですぐに原典(シュタイナー自身の著作や講演録)に手をつけても、その段差が大きくてつまづくことが多いでしょう。この本はその空白を埋めるもので、入門の次のステップとして読むのにちょうどいい内容であるように思います。

シュタイナーはほんとうに多くの分野で功績を残した人ですが、日本においてシュタイナーの名前は主に教育の分野で耳にすると思います。その、いわゆるシュタイナー教育と呼ばれているものの内容をとてもざっくり一言で書くと、人間の成長に必要な栄養として学問や芸術を与えるというものです。社会の要件に合わせて必要な人材を育てるという観点に立つ慣行教育とは、出発点から異なっています1

人は身体の成長に食べ物や健康的で清潔な生活を必要とするように、心の成長に愛情や社会性を栄養とするように、知識や概念を身につけたり様々なことがらを考えたりすることもまた人の成長の中で必要な栄養素であるという考え方はたしかに得心できるものです。このような出発点に立つ場合つぎに知りたくなるのは、教師たちはどのように子どもの成長を捉えているのか、あるいは、どのように人の一生を捉えているのかということです。

人智学 - 入門のその次へ

その人間観はシュタイナー自身が創始者である人智学という学問に結実しています。シュタイナーは様々の分野で功績を残したと先に書きましたが、全ての基底にこの人智学でのべられている人間観・世界観が流れていて、すべてはこの人智学という幹からのびた枝のようなものだと考えることもできます。人智学から延びたこれらシュタイナーの残した足跡は、それぞれの分野で後継者がそれをさらに発展させ、難解な内容もそれぞれの分野ごとに入門的な書籍が発行されたりしています。それでもやはり中心の人智学を理解することは、いずれ必要になってきます。しかし基本なのですが、ここが最も難解と言ってもいいでしょう。

この本を一言で表すと、冒頭に書いたように人智学の「入門の次」となるでしょうか。シュタイナーが人智学を創設するまでの伝記的な第一章「シュタイナーが歩んだ道」二始まり、二章と三章ではシュタイナーの主たる著作から人智学のエッセンスを足早に、しかしけっこう解りやすく紹介しています。後半の四章から六章まで、人智学から捉えた人間の歴史と人類の未来について、シュタイナーの没後から現代までを補足しながら解説しています。

第一章の「シュタイナーが歩んだ道」でシュタイナーが様々の発見をしていく過程が書かれていますが、それはそのまま、どのように学習を進めていくかの参考になります。

二章・三章で人智学を足早に俯瞰することは、難解なシュタイナーの著作を読みすすめるにあたっても「地図」のように役立ちます(もちろん実践の上でもたいへん役に立つと思いますが、このブログは学習がテーマなのでそこはあまり触れないでおきます)。

とは言え、人智学は10年単位で取り組むような学問であると、この本の著者は言います。確かに最低でもそのくらいは見積もる必要がありそうです。サポンテは死ぬまで無理な気がします。でも人は前に進むようにしかできていないのだから、道を間違えることがあっても、後戻りするようなことがあっても、ゆっくりでも歩きつづけていこうと思います。同じ歩くならイヤイヤながら重い足取りで歩くのではなく、その先にあるものを見据えて楽しみに歩いていこうと思います。


  1. 反対に、社会の要請から教えるものを決めるというのは何か違和感があります。なぜなら往々にしてその内容や方法が間違ったものであるからです。