マニュアル人間とは
「マニュアル人間」というのはなんでしょう。
「マニュアル、つまり決められた手順が書かれたものの通りに業務をこなす人」という意味ですが、そこには「それしかできない」という言外の意味が隠されています。
マニュアル人間の欠点
それしか出来ない。つまり「融通がきかない」「自分の意見を持たない」など、どちらかというと否定的な意味合いで他人を揶揄する場合に使われています。
もっと遡って、そもそもマニュアルとはなんでしょうか。
機械や家電であればその使い方を書いた使用説明書、仕事であれば業務手順書などですね。一般化すれば「すでに決まっているやり方が書かれたもの」となります。
「マニュアル人間」と言うとき、それは「決められた通りのやり方『しか』できない人」となるでしょうか。確かにこれはいけません。
なぜなら社会や業務というものは常に変わっていくからです。それは世界が変化するからです。人びとの求めるものが変われば、仕事に求められるものも変わる。当然、組織や取引先も常に変わっていきます。そうした中で仕事のやり方が変えられない人(あるいはそうした人を抱えた組織)は取り残されていってしまいます。
また人間は完璧ではないのでマニュアルから漏れてしまった「想定外」が必ずあります。そうしたマニュアルから漏れているばかりに想定外に対応できない人や組織もきわめて脆弱であると言えます。
そういう意味で、マニュアル人間で居続けてはいけません。
アンチ「マニュアル人間」
マニュアル人間はよくない、と先に言いましたが、ではどうすればいいのか。どうもこの先を深く考えることなく、この言葉だけが一人歩きして、あろうことか「マニュアルを読まない」ことを選択している人が多い気がします。これでは先ほどの「マニュアルに書かれたこと『しか』できない人」どころか、「マニュアルに書かれたこと『すら』できない人」になってしまいます。実際、そのような人が多くないでしょうか。
これはマニュアル人間とは反対の意味でマニュアルに囚われています。言うなれば「『アンチマニュアル』人間」です。マニュアルを読めばいとも簡単に正解にたどり着くことができ、日々の仕事や作業が効率化できます。そうしなければいたずらに時間をかけるばかりです。これもまた良くありません。『アンチマニュアル』人間であってもいけない。
マニュアル人間と『アンチ』な人の共通点
こうしてマニュアルさえ読むことが出来ない人は、内心否定しているはずの正反対な人たちと、じつによく似ている点があります。
(1)自分で考えない
「マニュアルに書かれたことだけを行い、その正否(マニュアルも人の作ったものである以上、誤りを含む可能性があります)、合否(現実に則しているかどうか。現実は変化します)を自分で考えない」のはよくありません。
しかし「マニュアルを読まないことで、最低限の知識すら持てなくなっていることに気づいていない」のは、さらに良くありません。
前者は「マニュアル」という最低限の知識を持ちつつ、その限界にとらわれていることが問題ではありますが、壁を越えれば良いわけで、それは目の前にあると言えるでしょう。しかし後者はまだスタート地点にも立っていません。
(2)同じ失敗をする
「マニュアルに書かれたことしかできないために、マニュアルに不備があったり、現実の方が変化して対応できなくなる」と、マニュアルに囚われている限りは同じ失敗を繰り返します。
「マニュアルに書かれていることを知らないために、既に他所で起こった失敗事例と同じ失敗をする」のは、仕事では許されないことです。マニュアルを読まない人は、わからないことを安易に他人に尋ねます。そもそも内容に興味がないため覚えることができず、同じことを繰り返し人に尋ねます。そして同じ失敗を繰り返します
どちらも若いうちは周りも支えてくれるかもしれませんが、度が過ぎれば、いずれ「お荷物」だと思われるでしょう。
(3)何かの所為にする
「だってマニュアルに書かれていないから」マニュアルが悪いわけではありません。そこには最低限のことが書かれているだけです。
「マニュアルなんか読んだら『マニュアル人間』になってしまう!」マニュアルが悪いわけではありません。そこには最低限のことが書かれているだけです。
二種類のアンチ「マニュアル人間」
「アンチ『マニュアル人間』」には、「マニュアルを読んで最低限の知識を早く身につけた上でさらに先へと進んでいく人」と「マニュアルを読まず、いつまでもスタート地点に立てない人」の二種類があります。どちらを目指すべきか言うまでもないことでしょう。
マニュアルを超えて
マニュアルが悪いわけではありません。何れにしても、囚われていてはいけません。
マニュアルに目を通す人とそうでない人では、やはりスタートダッシュが全然違います。
マニュアルには最低限の知識が書かれています。読んで、まずはスタート地点に立ちましょう。そして日々、より良い方法を探してください。時にはマニュアルを修正したり、自分の知見を加えたりしましょう。世界は、そうして少しずつ前へ進んでいます。世界は、あなたにしかわからない「より良い方法」を常に求めているのです。