サポンテ 勉強ノート

サポンテの勉強ノート・読書メモなどを晒します。

『イラクサをつかめ』を読んでいます

思ったよりもハウツー本

 現在、ドキュメンタリー映画ヒト・ウシ・地球』に出演していたニュージーランドのバイオダイナミック農家であるピーター・プロクターが書いた本、『イラクサをつかめ』を読んでいます。

 読む前は、様々な場所に広がっているバイオダイナミック農法の事例集のような感じなのかと思っていました。実際には思ったよりもハウツー本でした。バイオダイナミック農法の実践について、詳細な記述があります。実際にバイオダイナミック農法を取り入れているところでは非常に有用な情報に溢れています。

特に貴重な南半球のやりかた

 バイオダイナミック農法はヨーロッパで生まれました。そのため、情報の多くは北半球でのやりかたに偏りがちですが、この本の著者がニュージーランドの方なので、南半球の情報も偏りなく載っています。

 またインドという温暖な地での実践から得られた情報も貴重です。

翻訳ゆえのわかりにくいところ

 一方、翻訳書籍にありがちなマイナス点もあります。

 肥料用調剤の使い方について、一読してわからないところがあったので紹介と解説をします。150ページです。

乾いた草や古い堆肥などで固形の堆肥をそれぞれ別に包みます。堆肥の一側面に間隔をあけてかなり深い穴をあけ、固形堆肥をそれぞれ別の穴に入れてしっかり閉じます。

 堆肥という言葉が何度か出てきますが、この中では三種類の意味でこの堆肥という言葉が出てきています。一読しただけでそれを見抜くのは至難です。これは翻訳のせいなのか原著のせいなのか、わかりませんが。

 元の文章をなるべく変えずに、書き直してみます。おおよそ次のようになるでしょう。

乾いた草や既に発酵が終わっている堆肥を用いて固形の肥料調剤をそれぞれ別々に包みます(1)。これから発酵させようとしている積み上げた堆肥の山の一側面に間隔をあけてかなり深い穴をあけ、(1)で作った塊をそれぞれ別々の穴に入れてしっかり閉じます。

 ここで「固形の堆肥」と言っているのは、固形で使用する502番から506番の肥料調剤のことです。液体として使う肥料調剤の507番と区別してこのような表現をしているのでしょう。これを別の堆肥でくるみます。それは「古い堆肥」と書いてありますが、これからこれらの肥料調剤を使おうとしている堆肥の山とは別にとってきたものと解釈しなければいけません。つまり発酵済みの堆肥か、乾いた草で、肥料調剤のお団子をつくるイメージですね。

 「それぞれ別に包みます」と書いてあります。これは、肥料調剤を同じ穴に入れない方が良いというシュタイナーの言葉に拠っています。一つのお団子には一種類の調剤が入っています。

 それを、これから発酵・熟成させいようとしている堆肥の山に加えるので、その積み上げた堆肥の山の側面に、深い穴をあけます。その穴にお団子を詰めていくイメージです。それぞれの調剤は同じ穴に入れてはいけないので、穴と穴は間隔をあけます。その穴に、上記で作ったお団子を入れていきます。一つの穴に一つのお団子です。これで複数種類の肥料調剤が同じ穴には入らないことになります。それぞれの調剤の放射力が干渉しあうのを避けることができます。

 本に載っている文章で出てきた「堆肥」という言葉は、それぞれ「発酵が終わった堆肥。ほとんど土」「肥料調剤(見た目はほとんど堆肥)」「これから発酵・熟成させようとしている堆肥の山」の三種類にわけられます。一読しただけではわかりにくい。バイオダイナミック農法の経験があったとしても、読んでいてつまづくところです。こうしたところは読んでいてストレスになるので、特に意図がないのなら読みやすくしていただきたいところ。

農業講座と違う用語・訳語を使っている

 参考文献にイザラ書房の農業講座が載っているのに、訳語が不統一なのが気になりました(別訳版は参考文献に載っていない)。これはバイオダイナミック農法の原点である農業講座に寄せて合わせて欲しい。みんなそっちを最初に読むと思いますので。あるいはせめて違う用語・訳語を使用した意図を明記するか、農業講座での用語・訳語と併記して欲しかった。

 農業講座で「ノコギリソウ」とされているものが、この本では「ヤーロウ」となっています。

 農業講座で「カミツレ」とされているものが、この本では「カモミール」となっています。

 農業講座で「カノコソウ」とされているものが、この本では「ヴァレリアン」となっています。

 以上、ご参考までに。