
- 作者: 高野苺
- 出版社/メーカー: 双葉社
- 発売日: 2013/12/25
- メディア: コミック
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物語の舞台は長野県松本市の高校。映画化もされたので、ご存知の方もおおいでしょう。
この記事はネタバレを少し含みます。原作のコミック、あるいは映画を観た後でごらんになった方が良いと思います。
どちらもまだという方は、コミックを読むか、映画やアニメを是非ご覧になってください。
内容を二行で紹介
今日出会った転校生を好きになり、そして一年ほど後に死別することを十年後の自分自身から届いた手紙により知る。それを止めようとするヒロイン菜穂の葛藤が描かれています。
読む前の誤解
読む前のあるとき、長野県の本屋さんで平積みされているのを見かけたことがあります。そのときは「地元愛」的な感情から、そうなっているのだとばかり思っていました。しかし映画化されたことを知って、そうでは無く、実力で面白いのだと主知らされました。1〜5巻を買い、一気に読みました。
私は原作を読んでから映画を観、家族は映画を観てから原作のコミックを読みました。はたしてどちらの順が良いのか、こればかりは一度きりしか体験できないので答えようがありません。どちらも観た(読んだ)という方も多いかと思います。解っていただけると思いますが。
オレンジ
原作(5巻までの)ではタイトルの「オレンジ」が作品の三つのものを象徴していると思っています。
最初に登場するのは主人公がオレンジジュースを飲みたいと思いながら、それを口にすることをためらうシーンです。ここではそんな些細なことさえ口に出せないヒロイン菜穂の内気さ、また同時に乗り越えるべき試練の一つを象徴しています。
次はそのオレンジジュースを飲むシーン。淡い恋心を抱いていた翔(かける)がヒロインの先輩とつきあうことになり、帰宅して自室で一人そのジュースを飲んだときに感じる青春の甘酸っぱさそのものの象徴。
最後は10年後の自分たちから届く手紙の中にありました。東京から転校してきた翔に松本の美しいところを見せたいと、仲間達はおのおの季節のオススメポイントを約束します。春、桜に包まれた弘法山を見せたいと言ったのは菜穂でした。10年後の世界で、菜穂は翔のいないまま弘法山から夕陽に染まる松本の町を眺めます。「オレンジ色に染まる町」を翔といっしょに観たい。菜穂と仲間達の、その願いの象徴でした。
弘法山古墳は松本に数ある桜の名所のなかでも特に別格で、古墳全体に植えられている桜が一斉に咲くさまは遠くからでもよくわかるほど圧倒的です。その美しさは逆に菜穂たちの喪失感をなお一層強くさせるでしょう。読んでいてほんとうに心が痛くなるシーンでした。
映画を観て

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映画を観て、物語の中で重要な3つのことが欠けていることが残念に感じました。物語の解釈は人それぞれとも言えるので仕方ないのかもしれません。
タイムカプセル
一つはタイムカプセルです。翔を含め、高校生の主人公達が10年後に掘り出す約束でタイムカプセルを埋めます。それは10年前に手紙を送ることを思いつくきっかけとなります。どうして10年後から手紙が届いたのか、10年後のみんなはどうして手紙を送ろうと思ったのか、その胸が熱くなるエピソードを含めてまるごと削られています。これなしで「なぜ手紙を送ろうという発想になったのか」「なぜ手紙が届くと思えるのか」はまったくわからないでしょう。
翔の後悔
菜穂がソフトボールの試合に代打で出てほしいと頼まれたとき、菜穂は密かに足を痛めていました。それとは別に、引っ込み思案なその性格から代打を断ろうと思っていたところ、翔は足のけがを指摘し、やめた方が良いと助言します。それは翔の優しさをよく表しているエピソードですが、菜穂は10年後から届いた手紙に試合に出るよう、強く願いが書かれていたことから試合に出ます。
10年後の世界の菜穂が体験したのは、翔の助言どおり代打を断り、試合に負けて親友を泣かせてしまうことでした。
映画で観る限りは、手紙に書かれていたのは菜穂の後悔を消すのが目的であるように感じるのですが、実はこのとき、自分の助言で菜穂の親友を泣かせてしまった翔の方がずっと深く傷ついていました。自分が余計なことを言ってしまったばかりにと。そしてそれは、これまでもずっと繰り返していた失敗のつづきのように感じていたのです。
原作では、翔を失った世界で翔が感じていたことを描いています。手紙を読んで少しずつ主人公達が変えた時間。そのとき翔がどのような思いでいたのか。どんな後悔を消すことができたのかが描かれています。
オレンジ
前述した「オレンジ」が象徴するもののうち「主人公達の願いの象徴」というのが全く抜け落ちています。なぜタイトルが「Orange」なのか微妙にわからないかもしれません。もちろん、わからなくても別に構わないという気もしますが。
原作にないところ
映画にも、原作にはない良いシーンがあります。10年後の菜穂が古い日記を読み返すところです。
また実際に松本市でロケをしているので、主人公達の感じた美しい景色を見ることができます。
もし原作しか読んでいないという人がいたら、是非。
第6巻
先日、第6巻が出ました。原作者の方が考えていたもう一つの最終回と、十年後の須和のエピソードが載っています。

orange(6) -未来- (アクションコミックス(月刊アクション))
- 作者: 高野苺
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蛇足です。別に要りません。
魔女の宅急便で「ジジとは再び会話できるようになったのか」決着を見ないとどうしようもないという人は見ても良いのかもしれませんが、要りません。
1〜5巻で完結しています。特に要りません。
かと言って(よくあるアニメなどとは異なり)それがあることで1〜5巻の価値が減ぜられるというものでもないので、買っても(読んでも)後悔はしないでしょう。
アニメ版

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アニメ版は観てないのです。