サポンテ 勉強ノート

サポンテの勉強ノート・読書メモなどを晒します。

宇宙的人間論 光、形、生命と人間の共振〈新装版〉春秋社

農業講座の続編として

 書籍のタイトルには「人間論」とありますが、内容としては「宇宙全体の中の人間の位置づけ」あるいは「宇宙全体の様々な存在がどのように人間に働きかけているか」のような感じで、人間そのものよりも人間に働きかけている存在たちの話が多くを占める印象を持ちました。

 その意味でこの講演録全体は、別の講演録『農業講座』を補完する内容を含んでいると強く感じました。

 農業講座は、200人を超える聴衆に対して催された講演であり、したがってほぼ「不特定多数」に準じた聴衆に対する講演と言ってよいものでした。人智学に対する興味と理解はまちまちであり、シュタイナーの講演としては比較的表面的な内容に成らざるを得なかった講演でした。それでも十分奥深い内容ではあるのですが。農業講座は全体的に「農場を良く観察するように。農場そのものだけでなく周りの環境、それは隣接する土地に留まらず、下は大地・地球全体と上は天空・諸天体を含めた広い視野を含めて注意深く観察するように」という内容を語っていると感じました。ただその視点を持つために、既存の科学のような顕微鏡によって植物の中へ中へと入っていく方向ではなく、植物の周りに何があって、さらにその周りには何があってそれらは何によって影響を受けて、さらにそれが作物の生長にどう影響を与えているのか。それをどのように観察するべきか。そのような示唆でした。

 この書籍『宇宙的人間論』は、その「周り」について記述されたものであると感じられました。『農業講座』を読んで、さらにその先を知りたいと願う農者の頼りになるものではないかと考えます。

人間が生きる本来の環境とは

 サポンテは現在都市部に住んでいます。郊外とも言えない場所です。そのような場所で暮らしているとつい、人間の活動は人間の活動だけに支えられていると錯覚してしまいます。そのような場所に見られる草花や野鳥などの動物は、人間の愛玩的な自然であったり、雑草や害虫などの異物として認識されがちですが、本来人間の生活はそれらに支えられ頼っています。それらの中に何が活動していて、その目的は何であるのか。それを知ることは、人間の本来を知るために大切なことであると、この本を読んで強く感じました。