はじめに
社内勉強会で、とあるリントツールを紹介したところ「フリーソフトの使用が禁じられている出向先はどうすればいいか」という質問がありました。
日本の IT 現場では、いまだに「フリーソフト = 悪」という先入観が幅を利かせており、有用な道具を導入できずビジネスチャンスを逸しているという愚が繰り広げられています。
フリーソフトは危険か
確かにフリーソフトウェアはサポートがないという点で信頼性に欠ける嫌いがあります。また実際にフリーソフトウェアが引き金となるセキュリティ事故も少なくありません。
しかしながら「フリーソフト」という括りでその先入観を適用するならば、Linux も MySQL も種々のランタイムも該当します。これらはビジネスの現場に導入されていないでしょうか。
ビジネスとしての機会損失
冒頭で紹介したリントツールというものは、プログラムソースコードの静的解析を行い、脆弱性や不具合を誘引しかねないアンチパターンを早期に指摘してくれるものでした。
また広く普及しているバージョン管理ツールである Git も、業務や成果物の品質を上げるために有効なものという認識が共有されています。
これらビジネスの現場で有用なツールは有償のものが多いですが、無償で広く普及し、代替が難しいものも少なくありません。それらを導入しないということは、自社のビジネスが提供するサービスや製品の品質向上に対して非常に消極的であることを示しています。
働く者の機会損失
翻って働く者として、フリーソフトの使用が制限された場合に何が起きるでしょうか。
リントツールで言うならば、自分のコードの拙いところを修正し、スキル向上を加速させる補助をしてくれるものです。
Git はソースコードやドキュメントの履歴を管理し、事故を防ぎ、チームによる業務を効率化させるものです。
業務効率化のため、品質やセキュリティ向上のために、有償かフリーかを問わず様々なツールに精通・習熟し使いこなすことは、労働者のスキルセットとして非常に重要です。今日そのようなツールを業務で使えないというのは、キャリア形成に障害となります。
働く者の権利としてのツール群
経営者の方には「フリーウェア」を十把一絡げに忌避するのではなく、いくつかのツールに対しては自由に使用できるよう検討をお願いいたします。
それは、製品やサービスの品質を向上させるために不可欠なものです。これらを導入していないということは、ビジネス上でいくばくかの機会を確実に逸しており、顧客に対する責任の一部を果たしていないことを示しています。
またこれは、労働の対価として得られる「業務経験」と言う名の労働者の権利です。少なくとも以下の要件を満たすツールは有償無償問わず、福利厚生の一つとして、その使用権を保証してください。
- 安全性が確認されていて長い実績があり、広く一般に利便性が認知されている
- ライセンス的に問題ないことが確認されている
- その労働者と長い経験を伴にし、手に馴染んでいる
個人的に
個人的に必要なものを並べておきます。
- Karabiner-Elements (macOS)
- Clipy (macOS)
- Scroll Reverser (macOS)
- AutoHotkey (Windows)
- Change Key (Windows)
- Clibor (Windows)
- Launchy (Windows)
- Git for Windows (Windows)
- EmEditor (Windows)
- BTS (Redmine など。Web)
- SonarQube (Web)
リントツールは...言語によって異なるので具体的にコレとは書けないのですが、無いと困りますね。現在は C# で SonarQube を使用しています。エディタは「ミニマップ」機能を持つものを使用しています。EmEditor は動作が非常に軽快で気に入っていました(現在の職場で使えず)。
皆さんにとって「これが無いとマジで困る」ものには、どんなものがありますか?
おわりに
「いったいどこの世界線だ」と思う方もいるかもしれませんが、冗談ではなく本当にバージョン管理ツールすら導入していない現場は、現在でも少なからずあるのです。