はじめに
ビーガンに拒否的な反応1をみせる人はときおり、すでに答えの出ている古臭い疑問を繰り返し口にします。
疑問に思うのであればそれを調べる方法はいくらでもあるのに、無知な自分のままでいることを選択する気持ちはよくわかりません。せっかく問いが手に入ったのに、そのままにしておくなんて勿体ない2。
ビーガニズムの普及で家畜は絶滅するか
そのような疑問のひとつに「ビーガニズムが普及すると、用済みになった動物たちが行き場を無くして絶滅するのではないか」というものがあります。突っ込みどころが多い質問ですが、ビーガンの側からの回答はすでになされており、ほんの少し調べれば飽きるほど多くの回答を見ることができるでしょう。
ですので、すでに提出されている回答については、この記事では触れません。
この記事では、その「すでに提出されている回答」に含まれていないと感じる視点について記します。
ビーガニズムから出てこない回答のひとつ
家畜動物が人類にもたらす恩恵は、食肉だったり、乳をとったり卵をとったりする以外にもあります。
その一つが「糞」です。
糞とはなんでしょうか。この記事では主に家畜動物について書きますので、草食動物の糞に限定してよいでしょう。
糞とは、植物の朽体が急速に分解したものということができます。草食動物に消化されなくても植物はゆっくりと腐食・発酵・あるいは風化していきますが、その速度は緩やかです。この「急速に」という点が重要です。
この急速に分解したものが、食べられてしまった植物(草)の次世代の養分になります。場所や生えている植物によりますが、この急速な分解がある程度されないと養分不足になって植生を保てない場所があります。
アラン・セイボリーの TED Talk:砂漠を緑地化させ気候変動を逆転させる方法
そして人間にとっても、家畜の糞は農業を支える重要な要素です。
シュタイナーも、農地は完成した生態系である必要があり、そこに一定数の動物が必要だとはっきり言っています。そして「糞が残っていることに、私たちは本当に感謝しなくてはなりません」とも語っています。
動物利用か
この「糞の利用」もまた動物からの恩恵であるため、広義の「動物利用」と言えるかもしれません。ビーガニズムには、動物から搾取しつづけた人間の歴史に対する反省のようなものが根底にあります。だから「糞の利用」にも抵抗があるのでしょうか。ビーガンの方から、この「糞の利用」に対する見解はあまり聞きません。
回答の一つとして
野生動物ではダメなのかという疑問もあるかもしれませんが、比較的穏やかで人間に友好的な家畜動物の方が扱いやすさで勝ります。私たちが長い時間の果てに肉食を手放したとしても、糞という大いなる恩恵がある以上、家畜動物への依存は完全にはなくならないと思っています。
家畜動物は永らく絶滅しないと思います。