はじめに
あいちトリエンナーレの企画の一つである表現の不自由展・その後が開催からわずか3日で展示が中止される事態になりました。
物議の中心となっていたのは「平和の少女像」という作品で、従軍慰安婦を連想させるため「芸術ではなく政治的」との批判がありました。
日本人の多くは、この批判が的を外していることに気付いていません。
従軍慰安婦は政治問題ではない
従軍慰安婦は、日本の非人道性を非難する文脈から既に脱却し始めており、戦争が包含する性暴力に対する悲しみの象徴として、世界に受け止められつつあります。
例えば日本ではこの季節になると、核兵器の被爆を記念した TV 番組が放送されますが、ここに反米感情を見出すことはありません。ただ未曾有の災禍として、その悲しみが共有されます。また日本人が海外でヒロシマ・ナガサキに関連する展示やアピールをすることを「政治」の文脈で語る人はいません。
例えばホロコーストは、一つの宗教に対する狂気の迫害と、そこで起きた惨禍として世界に記憶されています。ホロコーストを記念した催しは数多ありますが、現在のドイツと関連づけたり「政治」の文脈で語られることはありません。
世界において従軍慰安婦は、すでにそのようなものになりつつあります。「平和の少女像」と名付けられていることと、像が韓国以外の場所でも設置される例がでてきたことは、それを示しています。
日本の時代錯誤
韓国が国外で従軍慰安婦のことをアピールするのは、日本人がヒロシマ・ナガサキを海外でアピールするのと同様、悲しみの共有と非戦への願いです。最早、政治問題を超えているのです。翻って日本がこうしたアピールに抗議したり、従軍慰安婦を否定するようなアピールを内外に向けて発信するような行為は100%「政治的」でしかありません。
日本国内しか見ていないと「どっちもどっち」と思うかもしれませんが、そうではないのです。この点、気に留めておくべきです。そうしないと日本政府はいつまでたっても恥をかき続けることになるでしょう。
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