
- 作者: マルヨラインホフ,野坂悦子
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2010/05/19
- メディア: 単行本
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本の紹介
小さな女の子キークのパパはお医者さん。困っている人たちを助けるために紛争地域に出かけていきますが心配でなりません。パパが無事に帰ってくる可能性を少しでも大きくするためにキークがしたことは...。
不安と行動
キークの感じている不安がとても的確に表現されていて、それはただ驚くほかありません。離れたパパからの電話、ママの様子、おばあちゃんとの会話など。そしてキークが、パパが無事に帰ってくる可能性を大きくするために「うまくいくとは思えない」ことをしようとしますが、その子どもらしい理由についても、キークが不安に苛まれて冷静に考えられなくなっていることがよく解ります。ママは「心配なときって、ときどき、おかしなことを考えてしまうものなの」と言います。自分も同じように感じることがあると、キークの心に寄り添います。
抱きしめたくなる
あとがきによると「読者はきっとキークを抱きしめたくなるだろう」という書評があったとのこと。実際、そう感じます。自分がもしキークの側にいたら、きっとそうすることしかできないのではないかと思います。それは慈しみから発する気持ちかもしれませんが、自分には何割かは無力感が含まれているかもしれないと感じます。不安な気持ちを和らげてあげることは難しいものですし、子どもは、そうした気持ちを持っていることをうまく表現できるほどの経験を持たないことが多いもの。それは大人であっても同じ。不安の種が大きいほど、自分の気持ちをうまく扱えない。物語の中でも、主におばあちゃんの言動にそれがよく表れています。
キークを抱きしめたいと感じる気持ちを大切にして他の人へ向けることができれば、大きな不安におしつぶされそうになっている多くの人に気づけるような気がします。