サポンテ 勉強ノート

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イオマンテ—めぐるいのちの贈り物 [寮 美千子:パロル舎]

はじめに

この本を初めて読んだ時、胸のあたりを「どん」と殴られたような衝撃を感じました。「すごいものを見つけてしまった」という気持ちでした。この感覚をどう表現していいのか、自分の語彙力のなさを痛感するばかりです。

この本との出会い

寝る前に子どもに読み聞かせをする絵本を探しているとき、偶然、この本に出会いました。表紙の絵は(中の挿絵も)精緻過ぎず、かといって極端に抽象的でもなく、自分の子どもの年齢に__わたしの感覚では__ちょうど良いと感じました。その場で読んでみたところ、すぐに読み終わった気がしたのですが、実際に読み聞かせをしてみると30分ほどかかりました(寝る前の読み聞かせとしては長すぎるかもしれませんね)。手に取ろうと思ったのは、かねてからアイヌの文化に強い興味があったからだと思います。

タイトルで気になったこと

タイトルに「いのち」とあり、__ひらがなで「いのち」とか「つくる」とか「ふれあい」とか書かれているものに、ろくなものはないと思っていました。まったくの偏見ですが、概ね当たっています。しかしこの本についてはそれは当てはまらなかったことになります__最初の印象は、ちょっとどうだろうかと言うものでした。

イオマンテ

あなたが「イオマンテ」というものをもし知らないのであれば、ネットで「イオマンテ」を検索する前に、是非読んでほしいと思います。ネットで検索すると、それがどのようなものかを知ることができます。ただそれらのほとんどは表面的な記述か、外部からの分析です。 この本 で指摘されているように、それは深い理解の妨げになる可能性があります。この物語を読んだ後で Wikipedia を見ると、それがハッキリわかります。

感想

“野生”というには残酷な、いや、野生というものは本来残酷なものであるはずで、それを、見ないフリをして居たのかもしれません。「野生」といった言葉を使う時、人によって印象は違うと思いますが、「野」という文字を含む熟語で連想するのは、野卑、野暮、粗野、といった、秩序よりも混沌、凛々しさよりもがさつさ、何となく雑な何か。どちらかというと良くない印象が多く、「理性」と対極にある領域だと感じられます。でも両者が同居する世界があるのだと、そう感じました。この物語が見せる「野生」は、たとえば野生動物が時折見せる気高いほどの凛々しさ、厳しさと力強さ、無駄なものを切り落とし研ぎすまされた真剣のような立ち姿のようなものとはまた少し異なる、すこし人間臭さが有りながらも、深い洞察と共感。そんなものを感じます。

この物語を「人の心の中で生まれた想像の産物に過ぎない」と切り捨てることが出来るでしょうか。「アニミズム」とひとことで狭いカテゴリーに押し込められる世界でしょうか。確かにこの物語は本当ではないと、私の「頭」では考えることができます。しかし胸の奥では__名古屋に生まれ育ち、北海道にまったく縁がないにも関わらず__この物語がほんとうのことを言っているのだと、はっきりと感じるのです。

最後に

絶版とは惜しい限りですが、是非多くの人に読んでほしい本です。

※ この記事は Markdown で書きたいために別途書き直しました。

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