サポンテ 勉強ノート

サポンテの勉強ノート・読書メモなどを晒します。

マリア・トゥーンの天体エネルギー栽培法(ホメオパシー出版)

はじめに

 バイオダイナミック農法を学びはじめるとすぐに、「それは天体の動きを考慮して作付けを行うもので、植物の種類によって、適している日とそうでない日がある」という話を耳にするでしょう。それはルドルフ・シュタイナーが8回の講演で示唆したものを、この本の著者マリア・トゥーンが詳細に研究し、発見したものです。

 この本を読む前にネット上で手に入る情報で、できる限りこの偉大な発見をした方のことを調べてみました。

マリア・トゥーンとは

マリア・トゥーン Maria Thun(1922~2012)

 農家の生まれ。夫のヴァルター・トゥーンが人智学者でヴァルドルフ学校の美術教師であったため、その影響からか人智学思想に親しむ。

 農業家のフランツ・ルルニ(1894~1981)が製作した種蒔きカレンダーを元に、40年以上バイオダイナミック農業を実践し、農作物の生長と天体の運行の関係を調べる。

 シュタイナーと異なり、その実践は霊視能力によってではなく、自然科学的・実験的手法による。特定の植物の栽培を1時間単位で記録するなど徹底的に実験と記録を行い、バイオダイナミック農法を実践し追求した。

 植物の生長は特に月の運行が農作業に強い影響することを発見し、1963年に研究発表。農作業のタイミングを助言するカレンダーを発行。以降毎年、彼女の死後も家族によってカレンダーの発行は続けられており、日本でも日本時間に計算し直されたカレンダーが翻訳されて発行されている

 だいたい以上のようなことがわかりました。

そして本に出会った

 Amazon で入手困難になっていたのに読みたい意欲は高まるばかり。近所の図書館にはなかったのですが、少し離れたところ(取り寄せはできない)の図書館には所蔵されていることがわかりました。なんと。こんなマニアックな本が。週末を待ち電車に乗って借りに行きました。

 書庫から出してもらったのは旧版の方でした。現在、新品で手に入るのは新版の方です。

 重たい本。写真が多いためか、図鑑や百科事典のような良い紙を使っていて非常に重いです。新版は Amazon の説明で「軽くなりました」とあるので、やっぱりみんな重いと感じていたようですね。

この本に書かれていること

 野菜は、どの部位を食用にするかによって大きく4種類に分類されます。それぞれ、根(や茎)、葉、実、花。マリア・トゥーンの研究で、野菜はこれらのいずれかに分類されます。それぞれ月がどの位置にあるのかによってタネを播くのに適した時間帯があり、それらは「葉の日」「実の日」などのように呼ばれます。どの野菜がどの分類に該当するのか、わかりにくいものもありますが__たとえばカリフラワーは花なのか葉なのか__後の研究によって多くの野菜はすでに分類されて(カリフラワーは葉、ブロッコリーは花とされます)この本にも掲載されています。

 この四分類は、それぞれ自然の四元素に対応し、根→土(牡牛座・乙女座・山羊座)、葉→水(魚座・蟹座・さそり座)、実→火(牡羊座・獅子座・射手座)、花→風(または光。双子座・天秤座・水瓶座)となっています。

 黄道十二宮に位置する星座は大きさが異なるため、それぞれの日は均等な長さではありません。カレンダーにはそれぞれの日が時間単位で示されています。

調剤の細かい分量

 農業講座で詳述されている調剤の、その使用する分量について、より細かく書いてあります。調剤そのものの作り方は書かれていません。

 入手方法が書かれていますが、現在、国内のバイオダイナミック農場でも少し手に入れることができます。

マリアトゥーン樽堆肥(BC)

 また、BD 農法で使われる調剤を独自の割合で配合した「マリアトゥーン樽堆肥(BC)というものも作っていて、この本にそのレシピがあります。シュタイナーの農業講座の中で示された材料の他に、鶏卵の殻と玄武岩を、それぞれ細かく砕いて粉末にしたものも使用するようです。

雑草や害虫の駆除方法

 農業講座にも雑草や害虫の駆除方法は書かれていますが、それはこの本によると最後の手段のような趣で、それ以外の、もう少し控えめな方法が掲載されています。

お茶を使う方法

 農業講座には第六講にスギナのお茶(508番調剤)について書いてありますが、この本にはさらにいくつかの植物を用いたお茶について、作り方、作用など言及があります。

この本に書かれていないこと

 この本は、農業講座でシュタイナーが示唆した内容に続く研究の成果から導き出された植物栽培についての手引書です。基本的に農業講座を読んでいることが前提であり、そちらで書かれていることについては、改めて記載はありません。理論は少なく、実践的内容が多い印象です。そのため少し読みにくい。この人の理論はもっと説明が必要であるように思うのですが、少し物足りないとも感じました。冗長さがないのは良いのですが、予備知識がないと内容を理解しづらいかもしれません。

内容の曖昧さ

 農業講座に書かれていることが省略されているということもあってか、内容に曖昧さを感じることがありました。

 たとえば以下のような記述がありました。

すでに木下に落ちている果実(片手一杯)から種を取り(重要!)、たき火で燃やします。

 これは、果実からタネを取り出してそのタネを燃やすのか、果実からタネを取り除いて果肉の方を燃やすのか、一読してすぐには分かりません。どちらとも取れる書き方になっています。「重要!」と書いてあるのに、いったいどちらの方法をとるべきなのか分かりません。

 また、様々な植物から「お茶」を作って利用することが書かれていますが、その原料となるものは、採取した植物をそのまま使用するのか、乾燥させてから使用してもいいのか、あるいはシュタイナーが農業講座で示した通りの方法で調剤にしたものを使用するのか(同じ植物なので)が不明瞭です。全体を読んで、基本的には採取したものをそのまま使用するらしいことが感じられましたが、自信はありません。

 翻訳の問題なのかもしれませんが、そのような曖昧に読めるところが多くあり、惜しい気がします。

著者紹介が少ない

 この偉大なマリア・トゥーンについても、もっと知りたいと思うのに、著者紹介はごくわずかしか書かれていません。冒頭に書いたような、ネットでわかることも書いていません。

 代わりに日本語版監修者紹介が著者紹介の三倍以上あります。不要です。

農業やってみたい

 サポンテは農業に強い憧れを持っていますが__一時期水稲栽培したこともありますが__できないでいます。新しいことへの不安と将来の不安などから、生き方を変えることは本当に難しいなと感じます。

農業講座

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