サポンテ 勉強ノート

サポンテの勉強ノート・読書メモなどを晒します。

「ただの傍観者」から「卑劣な傍観者」になりたがる人たち

グレタさんについての賛意

2019年09月23日、ニューヨークの国連本部で開かれていた気候行動サミットにてスウェーデン出身のグレタ=トゥーンベリさんが語ったことについて、まずはじめにことわっておきたいのですが、彼女の主張する内容は正しく、彼女の怒りはきわめて正当であると考えており、サポンテは双手を上げて賛同します。

【日英対訳】「言い逃れは絶対に許さない」国連気候行動サミットで16歳の活動家グレタ・トゥーンベリさんが行った怒りの #HowDareYou 演説(2019.9.23)|戦いのノート|note

すでに他の人がほとんどのことを書いてくれているので、サポンテが新たに語るべきことは何もないように思えます。

地球環境危機は手遅れ寸前。冷笑などしている場合ではない。 - 読む・考える・書く

それでも書かなければならないのは、やはり危機的状況にあることをひとりでも多くの人が声を上げ、より多くの人にしらせなければならないためです。

なぜか関心の薄い日本

つぎにはっきりとことわっておきたいことは、人間の活動による気候変動とその影響については事実であるということです。

このことは、農業をしていたり、身近に農業を営む人がいる場合、直接肌で感じていることです。

意外ですか?ツバルやアマゾンなど、遠い国で起きていることだと思っていましたでしょうか。日本は現在、気候変動の影響を切実に受けつつある国のひとつです。

したがってサポンテには、この日本の無関心をこそが意外に感じます。

いくつか理由はあるでしょう。まず日本は正常化バイアスの非常に強い国です。正常化バイアスとは、異常なこと、とくに危険なことが身に起きても「たいしたことはないだろう」「まあ大丈夫だろう」などと、正常な状態にあるという根拠のない偏見に心がとらわれてしまうことを言います。ひょっとしたら大規模な災害で大きな被害が出たときの報道などで聞いたことがある人もいるかもしれません。日本は正常化バイアスの強い国であるため、災害では大きな被害が繰り返し出ますし、公害・薬害も大規模になるまで放置されることになります。

次に考えられるのは、日本はもう工業国であり、都市生活者が9割を超えているということです。農業に従事している人、その近親者は非常に少ないのです。このことは意外に知られていないという調査があります。気候変動は身近な問題ではなくなって来ているということなのだと思います。50年、100年に一度降るかどうかという豪雨が毎年のように起きても、同じくらいに発生が希な強力な台風が毎年のように国土を襲っても、それを生活に結びつけて問題だと感じている人は少ないように感じます。

他にも理由や傾向はありますが、大雑把にいうと様々の点でこの問題について「傍観者」であるということです。1

グレタさんに対する中傷

正当な方法で正当な内容の訴えをしたグレタ=トゥーンベリさんに対して、ただの傍観者という立ち場にある日本人2が中傷するような発言をしています。

ブラックリストを作ることが目的ではないので、いちいち引用元を示したりはしませんが、多く見られるのは「自身の考えではなく、背後にいる大人に操られている」というものと「感情的である」というものと「そんなことをしていないで勉強しろ」というものです。

共通しているのは、グレタさんの主張する内容について賛同も反論もしていないということです。

内容について言及できるほどの理論ばかりか知識すら持ち合わせていないことを如実に表明しており、恥知らずと言えるでしょう。

またこの人たちが「背後にいる大人に操られておらず、ほんとうに自身の考えであるのなら耳を貸そう」とか「感情的にならなければ耳を貸そう」とも、けして言わないことも明らかです。あらゆる偏見と同様に、はじめに偏見・反感があり、それを隠すための卑劣な言いわけにすぎません。

グレタさんの言動に対し、正面からその内容に挑むのではなく、目をそらしながら中傷し傍観者であり続ける怯懦。

傍観者でいたいなら「ただの傍観者」として黙っていればいいのではないでしょうか。なぜわざわざ「卑劣な傍観者」になりたがるのでしょうか。じつにおろかです。

背後にいる大人という中傷

グレタさんは現在16歳です。

人間は第二反抗期というものがあり、おおよそ13歳〜17歳くらいのあいだに親や周囲の大人から自立し、独自の意志・意見を持つようになるものです。

「大人に操られている」と中傷している人はそれを「知らない」のか「まだその年齢に達していない」のか、あるいは自身が「その年のころでも大人に良いように操られるほど無知だった」のでしょうか。

いくらなんでもそれは考えにくいことと、「背後にいる大人に操られている」という証拠が何ら示されていないことから、これは偏見に基づく中傷であると判断することができます。

感情的という中傷

感情的であるという中傷について、先に、感情的にならなければ耳を貸すとはけして言わないと書きました。実際、耳を貸すことはないでしょう。そう言い切れるのは、気候変動に関する感情的ではない情報など掃いて捨てるほど存在するにも拘らず、それらに何十年も耳を貸していないためです。

したがって「感情的」との批判は、それ自体すでに「嘘をついている」ことになります。

また日本人は感情の表出が不得手という特徴を持っているので、相対的に感情的に見えるだけという可能性を考慮に入れていません。そして上で書いた日本人の多くに内包される正常化バイアスについても考察が必要です。これらのことに言及がないことから考慮しているかどうか疑わしいと言えます。

勉強しろという中傷

もしグレタさんが完全不登校して活動に終始しているのであれば「そんなことより勉強を」というのは批判としてはあり得るでしょう。しかしストをしているのは週に一日だけです。残りの日は学校に行っています。また、ゆっくり勉強をしている場合ではないほどの危機的状況であるとの訴えに対する反論になっていません。したがって、こちらも批判とは言えず、中傷というのが正しい見方です。

信用できないという中傷

なぜか「信用できない」という中傷もありました。

グレタさんが「私を信用して」と求めている箇所がどこにあるのか、サポンテは見出すことはできませんでした。

主張している事実がないのに、それを根拠に批判を行うことは批判とは言わず「言いがかり」と言います。

ここまで、いずれにしても、すべて傍観者でいることの言いわけであり、ただ滑稽です。

「引き返すことができない地点」

冒頭に紹介したブログに書かれていますが、温室効果ガスによって海水温が上がると、海底に溜まっていたメタンが大気中に放出され、更に温室効果が加速するということが起こりえます。そうなるともう人間には手がつけられず、大きな破局へと進むだけになります。そうした「引き返すことができない地点」というものが存在します。

その点が「どこなのか」については議論があるかもしれませんが、点は存在しているので、そういう意味で危機は実在します。

グレーはない

グレタ・トゥーンベリ: 気候のための行動への心開かれる訴え | TED Talk

私にとってこれ(地球温暖化)は白か黒かの問題です。生き残りの問題となればグレーな部分はありません

グレーは現状維持あるいは現状満足を意味し、危機を回避するために行動をとるのではなく、大勢に流されるに任せているという点で黒と同じです。傍観者でいるのは黒と同じなのです。

問題になっていることに沈黙するようになったとき、我々の命は終わりに向かい始める。

おわりに

この記事では、グレタさんに対する「批判」と言わず、主に「中傷」と書きました。これはグレタさんの主張する内容に対する言及が見られないことから「反論」ではあり得ず、指摘内容が事実と異なるという点で「批判」とも言い得ないためです。


  1. もちろんサポンテも、大口を叩けるほどではありませんが。

  2. 日本人だけではないという反論もあるかもしれません。しかしだからといって日本人が免責されるわけでもありません。