この本は、最後にこう結ばれています。
誰かが僕に「仕事は何なの?」って聞いてきたら、僕はこの本を渡してやるんだ。これはそのための本なんだ。
これは実際に作者のほんとうの気持ちかもしれません。でもおそらくは多くの開発者の心を代弁したものであると感じました。
この本は、エンジニアリングに関する本ですが、この本を読んで何かを身につけるというものではありません。エンジニアリングに関するエッセイがつまった本です。
技術書じゃないのか。読みたくなくなりましたか?自分の本棚に置いておくような本ではないと感じますか?サポンテはそうは思いませんでした。何となく折りに触れ読み返してみたい、そんな本でした。
本には、「あ、自分のことが書いてある」と思えるものがあります。新しい知識を得る。新しい世界を見る。そのために読む本というのも確かにあります。そのような読書をしていても、まれに、読んでいるこちら側の心のうちを、なんとなくモヤモヤとはっきりと言葉にできなかった気持ちを、明確にしてくれる本に出会うことがあります。
本に出会うまではっきりとしなかった、むしろ意識すらしていなかった「モヤモヤ」は、経験の中で気付かないうちに刺さった棘のようなものだったり、時代の雰囲気だったりというものです。こうした「モヤモヤ」を明確にすることで、人は前へ進んだり、深い知見を得たり、人に共感できる部分が増えたり、その深みを増すことができます。
「モヤモヤ」をそのままに日々を過ごすことはできるかもしれませんが、勇気を持って前へ進むにはモヤモヤをひとつひとつ丁寧にはっきりさせる作業が書かせないと思うのです。
この本はまさにそんな本でした。この本はエンジニアとして生きる私に、いくつかの示唆を与えてくれました。時を経てまた別の機会に読めば、また別の示唆を与えてくれるのではないかと思います。
またこの本には、ひとつひとつの話題に関連していくつかの参考書籍が紹介されていましたが、それらの本もかなり読みたくなりました。そうした指針になったという点でもこの本を読んでよかったと思います。
本を読みながらいくつかメモをとりましたが、ひとつのセクションのタイトルでもある「アサイチで自分の仕事をテストしよう」は明日からでも取り入れてみようと思いました。