サポンテ 勉強ノート

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リーコとオスカーともっと深い影(アンドレアス シュタインヘーフェル (著)、森川弘子(訳) 岩波書店)

リーコとオスカーともっと深い影

リーコとオスカーともっと深い影

本の紹介

「深い才能」を持つリーコと、「高い才能」を持つオスカーがベルリンの町でというか、正確に言えばリーコの生活の範囲内で繰り広げる冒険の物語です。

冒頭、リーコは道路に落ちているマカロニを見つけます。探偵映画が大好きなリーコは、自分も探偵のようにこの「見っけマカロニ」がどこからきたのか調べ始めますが、同じアパートに住む変人フィッツケさんに、この「見っけマカロニ」を食べられてしまいます。

ちまたを騒がす誘拐犯に親友のオスカーが囚われてしまったとき、リーコはアパートの新しい住人が犯人だと気づきます。

命名の妙

物語を通して「見っけマカロニ」「深い才能」「もぐもぐちゃん」「ビンゴマシーン」など、読者のこころをぐっとつかむ命名の妙があります。

リーコとオスカー

リーコの「深い才能」と対称的に「高い才能」の持ち主のオスカーはかんしゃく持ちだったり潔癖なところ(心配性?)があったりと、こっちはこっちで健康な人生を送るためには多くの苦労があるだろうと推測され、読んでいる方としては冒険の内容以外で(なにかやらかさないかと)ハラハラさせられてしまいます。

この物語りは主人公リーコの日記という形で綴られていきます。その「深い才能」を由来とする独特の視点と語り口で、やや読みづらい物語になっています。しかしリーコが様々のことを経験するうち、次第にその「深い才能」が枝葉を伸ばし、時には葉を落として豊かな土壌を作り、雨や風もあるけれど愛情深く育っていく様子を見ていくのは、物語の面白さとは別に、静かな感動を胸に点します。

リーコもオスカーも、その「才能」をまとっていながらも、子どもが本来持つ独特の優しさのようなものをかいま見せていて、読んでいて心の泉にきれいな水が湧いてくるような気持ちになる物語でした。

もちろん冒険の方も面白いですよ!