サポンテ 勉強ノート

サポンテの勉強ノート・読書メモなどを晒します。

わからん薬学事始(3) (まはら 三桃著、講談社)

わからん薬学事始3

わからん薬学事始3

第二巻

主人公の木葉草多は、家業として四百年にわたって秘薬を作り続けている家と郷里の久寿理島(くすりじま)を離れて、東京の「わからん荘」で下宿しながら難門「和漢学園」で薬学を学んでいます。この第三巻は高校三年生の生活が中心になります。

忍者

前巻では主人公の周りにいる若者の葛藤を乗り越える物語が描かれましたが、今巻では前巻で描かれなかった一人のエピソードがちゃんとあります。

主人公の下宿先「わからん荘」にて一緒に下宿している先輩、伸太郎さんは「どうぶつが苦手」という弱点を持ちます。

人の「何かに対する苦手意識」というものは、一時ではなかなか変わったりしないのですが、後でふり返ると、きっかけになったと思えるものは何かしらあるものです。

このエピソードの中で伸太郎さんの親族として忍者が出てきます。忍者にも、忍者だけが持つサバイバル技術と呼ぶべきようなものがありますが、その中で薬学に秀でた一族であったという設定です。

住んでいるのはもちろん忍者屋敷ですが、これを読んだ次の日にちょっと別の場所でも忍者屋敷という単語を聞いたので、その共時性にやや驚いています。

危機

主人公は今巻で、生薬の声を聞くという生来持っていた特殊な能力を失います。

物語の冒頭から登場する矢野先生は、このことをチャンスであると説きます。

気落ちする主人公に対して、他の生徒はその能力を持っていないにもかかわらずより優秀であると指摘し、追い打ちをかけます。しかし特殊能力があるがために、身につけようと思うことが難しかった知恵を身につけるよい機会であると説きます。

そして「生薬の声がまたきこえるようになるかどうかは、私にはわかりません。でも、声がきこえなければ、あなたは薬学をあきらめるのですか」と問います。その瞬間まで気落ちしていた主人公はその問いに「いいえ」と答えることができ、その自分の心の確かさに生気を取り戻します。

矢野先生

第一巻から常に主要な登場人物のひとりである矢野先生は、とても厳しいのですが、やはりそれは人の命を左右しかねない薬学に対する緊張感がそうさせていることが、主人公にも伝わっています。

また人生を左右しかねない教育者としての緊張感も持ち合わせているようで、人の弱点を容赦なく暴き指摘しますが、その克服についても、まったく適切な示唆をそれぞれの生徒に提示します。

主人公の生い立ちをはじめから知っていたことが今巻でわかりますが、その時折見せる優しさが決してそのことに由来を持つえこひいきではなく、教育者として人の可能性を信じているためだと伺えます。

薬の怖さ

危機に陥った主人公は保健室ではなく「特別保健室」に連れて行かれます。そこで出会った芳原先生は、薬には怖い面があることを説きます。

生薬と言えど身体に害をなすことがあること。今巻の主人公の危機は__ちょっと別の原因ではあるものの__そのことを示唆していると考えられます。

SQL アンチパターン

さきほど忍者屋敷という言葉を別の場所でも聞いたと書きましたが、それは SQL アンチパターンの勉強会です。

SQL も薬学も__というか、ほとんどのものがそうであると思いますが__有用な道具も使い方を誤れば毒になります。

使い方を誤らないためのアンチパターンは、きっと薬学の世界にも、そしておそらくはどの世界にもあるでしょう。その対義語はエンジニアリングの世界では「ベストプラクティス」。日本語にするなら「失敗例 1 」と「必勝法」などになるでしょうか。アンチパターンを学び危機を避けて(乗り越えて)ベストプラクティスを身につけるか、学ぶこと無くいつまでも同じ失敗を繰り返すかは、自分自身の努力にかかっているのですね。

完結

今巻で残念ながら完結のようですが、読んでいて、とても楽しい時間を過ごせました。

SQLアンチパターン

SQLアンチパターン


  1. アンチパターンは失敗事例集ではありません。事例というのは具体的なものごとを指しますが、パターンの言うのは繰り返し見られるものに共通する元型であり、定義が可能であるためです。と、twada さんのお話を聞いて理解しました。