サポンテ 勉強ノート

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ユビキタスコンピューティングの副流煙

ユビキタスコンピューティングの副流煙

PC やスマートフォンの普及、身の回りにコンピューターが内蔵されたものが増えるにつれ生活は便利になりました1が、それによって初めて発生した問題も数多くあります。いわゆる「ネットの闇」とか「プライバシーが企業に握られる」とかいう問題がよく取り上げられますが、この記事では別の問題を取り上げます。

着信音という脅威

ユーザーが操作した結果、時間のかかる操作の終了、タイマー、そして電話やメールなどの通知音など。音声は、ユーザーにフィードバックを与えるために重要なインタフェース要素です。ユーザーにフィードバックを与えるために進化し続ける GUI ですが、音声についてもどんどん進化しています。

結果どうなったか。

街角、オフィス、電車内の公共空間はもとより家庭内においても過剰としか言えない音と光があふれています。

それらは全て「人に適切なフィードバックを与え、人に注意を促すもの」です。しかし「メールの着信があったよ!」「新しい tweet があるよ!」と関係ない人に対しても注意も促してしまっています。

特に私は音にとても敏感なので、少し離れた場所からでも不意に音が鳴ると飛び上がるほど驚いてしまいます。また遠く離れた場所の大きな音(数百メートル先のトラックのクラクションなど)でも同様です2

仕事中なら集中が途切れますし、何より頻繁に驚かされるのは堪ったものではありません。これらは電子機器のもたらす「副流煙」です。

光の脅威

光についてはどうでしょうか。

ルーターやハブなど LAN 機器は導通の確認ができるようにランプ(LED)が付いています。状態を色や点滅方法でユーザーにフィードバックします。こちらも特に LED が低消費電力という特性と相まって、湯水のように使わるようになりました。また、高輝度へと進化する方向にあるため視界に入るノイズとしてすでに厄介な段階になっています。

PC の背面にも同様のランプが付いているものがあります。あるいは筐体内部のボードに刺さっているものが通気口から見えているのかもしれません。メーカーは「背面なら問題ない」と思っているかもしれませんが、PC に囲まれた日本のオフィスではしっかり視界に入ります(キュービクルが主流の海外なら問題はないのでしょうけれど3)。ほとんどが輝度の低いもの(高い必要は無いので)ですが、まれに必要以上にまぶしいものがあります。

クルマのシガライターに装着する機器の通電ランプには LED むき出しの製品もあります。夜間走行の車内ではまぶしすぎます。

このようなデリカシーにかける製品群があり、やはりこれも人によって深刻な「ノイズ」になっています。

経済的な成功の犠牲になっているもの

Apple Watch には iPhone への着信を他人に知られず触覚的に通知してくれる機能があります。正直この製品が最初に発表されたときは「わずか数日で電池が切れる腕時計など何の役に立つのか」と思い、全く眼中になかったのですが、この機能を知ったときは福音だと思いました。同時に、おそらく Apple 内部でも同様の問題意識があって、これが社会全体で顕在化する前に手を打ったのではないかと気づきました。同社は自社製品が雑音を垂れ流していると示唆するようなことは決して言わないでしょうから、この機能はプライバシーや利便性の点から特に強調されるでしょう。しかし内部的にはそうした問題意識が生まれたのだとにらんでいます。先見性の高さに定評のある同社だけに、大いにその可能性はあると思いますし、またその点で大いに感銘を受けるものでもあります。

しかしこれが最終解であるとは思えません。やはりスマートウォッチはスマートフォンほど普及しているとは言えないためです。

経済の犠牲になっているものは数多くありますが、その中に「大衆の無感覚」のようなものが入っていると感じます。 環境問題に深くかかわる人が、それがひとりひとりの個人の内面の問題であるとの気付きを得る のに似ているでしょうか。

「他にもっと大きなノイズ源があるのに、デバイスからのものだけを槍玉にあげるのは如何なものか」という人がいるかもしれませんが、ここで問題なのは音の大きさや発生源ではありません。「関係ない人 にも 注意を促す 」という点です4

雑音や喧騒に慣れた都市生活者なら気にならないかもしれません。しかし「雑音や喧騒に対して無感覚になっている」と自覚するとき、それを良しとする人はどのくらいいるのでしょうか。ここにもう一つの福音があります。これは、雑音にあふれた居心地の悪い世界が反面教師となるという消極的な意味ばかりではありません。ユビキタスコンピューティングによる多くの情報は同時に、多くの示唆をももたらすからです。

雑音が福音をもたらす…。図らずもなんかオチがついてしまった気がします。


  1. 必ずしもそうとは言えないという意見があります。ここでは詳しく書きませんが、それもまた同時に真であり、矛盾するものではないと考えます。

  2. 花火や雷などは「予期できる音」なので大丈夫なのです。

  3. PC メーカーは背面も「常に見られている」と意識してデザインした方が良いです。私が Apple 以外の会社の PC のデザインに及第点以下という評価をしているのはこのためです。Apple への言及が多くなってしまいましたが、決して Apple をほめて「ばかり」いるわけでは有りません。同社の製品群にも苦手なものは多々あります。

  4. 挙句の果てには、自身の持つデバイスでさえ、そこからの着信に翻弄され まるでそれがデバイスの所為だと言わんばかりのおかしな人 まで現れる始末です。

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